MediaLabにはいるには?
さて、ここからは特筆すべきMediaLab特有の入試プロセスについて記します。MediaLabが多様な学生を集めているヒミツがここにあると思います。
まずさくっと前提知識ですが、通常の大学院留学では次の6種の神器を揃える必要があります。いわゆるGPA(成績証明)、SoP(志望動機書)、推薦状3通、TOEFL(英語力証明)、CV(履歴書)、GRE(学力試験)ですね。どれも時間がかかるものばかりです。必須ではないものの7つ目の「奨学金」が加わると、大学の負担軽減だけでなく一定の能力の証明として有利に働くのは間違いないと思います。
MediaLabでは6種の神器のうち2つに大きな違いあります。まず1つ目はTOEFLではなくIELTSが課されるという点です。アメリカの大学でIELTSというのは比較的珍しいですね。併願を考える人は少しだけ大変かもしれないですが、ゴールが具体的なので淡々と対策するだけだと思います。
2つ目はMediaLabではGREという学力試験を受けなくて良いという点です。これは驚くべきことで、例えるならば東大を目指す高校生なのに普通みんなが受けているはずのセンター試験が免除されているようなものです。色んな留学ブログを読むとわかりますが、GREは試験の難しさよりも受験の不便さが印象的で「やばい、東京会場が埋まってて、沖縄で受けないと!」と泣きながら慌てて飛行機を予約する人が後を絶たない試験のイメージがあります。※あくまでイメージです。
私は専願受験をするとを決めていたため、GREを経験せずに済んだのは大きく心の平穏と時間の余裕につながりました。しかしながら、その代わりにMediaLabの入試を決定的に特徴づける次の資料の作成/提出を求められることになります。
それが「ポートフォリオ」と呼ばれる作品集の提出です。理系文系の大学生には馴染みが薄い言葉かもしれませんが、美術系/建築系の友人からはよく聞く単語です。個人の過去の作品/制作物/業績をWebサイトとしてまとめ、ポートフォリオサイトへのURLを提出します。研究者/クリエイターとして今までどんな活動をしてきたのか、研究/作品をまたがって流れているテーマが何か、グループに加わった後にどんな活躍をしてくれそうか。審査する人に伝わることを目指します。
たとえば志望する研究室の院生のポートフォリオを探し出して傾向をあぶり出したり、ポートフォリオサイトを持っている友人を作ってコメントをもらったり、事情を知らない学科の友人に見せてどう感じるか聞いてみるなどが良いと思います。参考までに、僕が一番感銘を受けた研究室の同期、
Kyung Yun Choiのポートフォリオをご紹介します。将来の夢はメタモンの開発と宇宙飛行士だという、ロボティクス/宇宙工学/アートに強いルネッサンスなガールです。
このようなポートフォリオの話をバリバリの工学畑の方としていて勘違いされがちなのは、単に見てくれを良くするという”浅い”意味でのデザインが求められているのではないということです。「自分がどうなりたいか」「それを余すことなく伝えるにはどうすればよいか」を考えて、それを最大限伝わるよう工夫します。特にMITクラスだと成績や語学力では上方向に差がつかないため、業績なりスキルなり思想なりの差別化戦略を立てる必要があります。
僕のオススメは、自分にキャッチコピーをつけてみて、知らない人が提出書類をぱらっと眺めただけでそのコピーを読み解けるか考えてみる方法です。多忙な教授が数百人の書類を見なければいけない事情を考えてみると、「○○で☆☆な××さん」という1言に昇華された印象に残る必要があるんじゃないか、というのがぼくの仮説です。何回かこれを繰り返して、読む人のキモチをデザインしていくと良いかもしれません(なんだか広告代理店のインターン課題みたいですね)
選考プロセスについてもう1つ知っておくと良いと思うのは、MediaLabの入試では、自分の志望するたった1人の先生からOKが貰えれば合格である、という点です。これは東大のように全員共通の筆記試験と面接試験を一定の規準でクリアすることが課されている試験との大きな違いだと感じます。(情報学環などは比較的近い入試スタイルかもしれません。)その教授がどんな研究を進めていてどんな進めていて学生を取りたいと思っているのか徹底的にリサーチするのが良いと思います。ここでも自分なりの仮説が立てば、主要論文を一通り読むなりその研究室が発表する学会に参加するなりメールを投げて問い合わせるなりアポを取って直接お話を伺いに行くなり、自ずと取るべき方法が見えてくると思います。
さて、留学を考えているあなたが次にやるべきことは、この記事のような2次ソースを飛び出して、MediaLabの
WebサイトのApplicationのページをくまなく読むことです。1次ソースを読み込んで、それから色んな人に体験談やアドバイスを求めに行くと良いと思います。特にMediaLabの
入試プロセスでは頭を動かすのと同じかそれ以上に、手と足を動かして情報を集めることが大事です。興味がある方がいらっしゃいましたら、ご気軽に
takatoshi_jpn@gmail.comまでご連絡ください。